橘の方を見てみれば
彼の方も何をしているわけでもない。
ただ、ぼーっと紙パックのストローを
口にくわえ、ある一点を見ている。
そこには何の意味も無いのだろう。
橘、足長いなぁ。
橘はダルそうに足を伸ばしている。
僕はなんとなく体育座りで座って居るのだが
同じように足を伸ばしたところで
きっと、そこまで長くない。
はぁ…――。
誰かが廊下で話しているのが聞こえる。
誰かが廊下を走っているのが聞こえる。
どこかのクラスが騒いでいる声が聞こえる。
誰かが駐輪場に自転車を止める音が聞こえる。
運動場の方から野球部の声が聞こえる。
名も分からない鳥の鳴く声が聞こえる。
風が木々の葉を通っていく音が聞こえる。
はぁ…――。
こんなにゆったりした気分で居るのは
いつぶりだろうか――…。