「…。」

ひたすら朝来た道を戻る。
本当は家になんか帰りたくない。

けれど、帰りが遅れるとお母さんから
小言を言われると一度体験済みだから。


―――逃げ出したい。
いっその事、死んでしまおうか。


僕にそんな勇気があるわけ無いけど。
「お前に、そんな勇気あるわけねぇだろ。」


「え?」

僕の中の言葉と同様の文章が
外から耳に流れ込む。

ヘッドホンをしていても
外界の音は聞こえるけれど、
今の声は、やけに大きく聞こえた。


「俺様はここだ。」

周りをキョロキョロしていると
首を捕まれ、無理矢理上を向かされた。

こんなことってある?
――人が浮いているなんて。

僕は夢を見ているの?
――やけにリアルなんだけど。

それに、僕の視界に映るこの人、
羽があるんだけど。




真っ黒な羽が。