「ねぇ、名前何て言うの?」


話しかけてくれたのは、向こうからだった。

生まれつきの病気をもつ私は、

他のこのように、外で遊ぶことができない。

幼稚園の部屋のなかで、

いつも折り紙を折っていた。


だけど、彼は、

そんな私を見つけて声をかけてくれた。

「椎名百合です…」

小さなか細い声で、

でも、彼にはっきり聞こえるように私は名前を口にした。

そっ…


彼は、私の手をゆっくり握り、満面の笑みで、

「僕は、成谷一輝。よろしくね、ゆりちゃん!」

と言った。


これが私たちのほんの小さな奇跡だった。