一気に変わってしまった空気に、私はハッと顔を上げた。

目の前には、兄の真顔。


一気に襲ってくる罪悪感。

兄はただ、私のことを心配してくれてるだけなのに……


「ご、ごめ……っ」

「……いや」


小さく首を振る兄の顔を、私は見上げることしかできなかった。


「……頼むから……」

「……え?」

「……いや、……」

「……」


二人の間に流れる沈黙。

カチカチという時計の無機質な音だけが部屋に響く。

沈黙は重いはずなのに……

二人だけの時間がずっと続けばいいのに、時が止まってしまえばいいのに、って思ってしまった。


――ずっとずっと好きな兄。

全てが私の理想で。

兄が私に優しいのは私が妹って立場だから、っていうのは頭ではわかってるのに、バカな私は期待をしてしまう。


その手が欲しい。

私だけのものになってほしい。


どうしてもその気持ちがなくなってくれない。

こんなに長い時間接しているのに、飽きもせずどんどん強くなるその想いに潰されそうになる。