――私がずっと好きなのは……


実の兄、隼人。


物心がつく頃から心の中にあった『お兄ちゃんが好き』という気持ち。

それが『恋』であることに気付いたのは、兄に彼女ができた時だった。

私が中学に上がった頃だ。

知った時はショックで仕方なくて、兄の彼女に嫉妬しては、毎日のように泣いていた。

こんな苦しい気持ちを忘れたくて、兄を嫌いになりたくて、兄を避けるようになった。

でも、嫌いになるなんてことはできなかった。

……逆に、求めてしまっていた。


その気持ちはずっと、ずっと、続いた。

どんなに他に好きな人を作ろうとしても、告白されても……兄以上に好きになるのは無理だった。


大学の頃には戸籍やいろんな資料を調べたこともあった。

よくマンガや小説であるように、本当は血が繋がっていないんじゃないか、と。

だって、血の繋がった兄にこんな想いを持つなんて、普通はおかしなことで。

私の周りの友達だって、自分の兄や弟のことをそんな風に思ってる子なんて誰もいない。

私が一度も兄に思ったことのない『ムカつく』とかそんな言葉を簡単に吐き出す。

だから。

きっと、私と兄は本当の兄妹ではないのではないか、と思ったんだ。


でも、物事はそんなに簡単なものではなかった。

私と兄はれっきとした、同じ両親から生まれた血の繋がった兄妹だった。