でも、じゃあ。


「……お兄ちゃんは?お兄ちゃんの幸せは?」

「……友美の後に考えるよ。友美が幸せにならないと、オレも幸せになれない。だから、早く幸せになって?」

「……もう、やっぱりズルいよ……」

「昔から知ってるだろ?」

「……バカ」


見つめあう。

……この表情は『兄』だ。

さっきまでとはもう、違う。

……絶対に、永遠に、手に入らない人――。

わかっていたつもりだけど、はっきりとわかってしまえば、心の荷が軽くなった気がして。


でも、きっと、私は兄への気持ちもキスも一生涯忘れることはない。

唇を合わせていた時間が、私の人生の中で一番幸せだった時間になる。

死ぬ時に思い出すのは、きっとあのキスだ。


「……幸せになれ。」

「…………」


言葉で答えることはできなかったけど。


こくん、と私は小さく頷いた。

そして私は、20年間持っていた想いを、封印する。