「…………本気で恨んだ。何でオレはオレに生まれてきたんだって」

「……」

「……ずっと、圭斗が羨ましかった」

「っ!なら!」

「でも。オレは圭斗にはなれないんだよ」

「……」


兄はゆっくりと剥がすように、私の身体を離す。


「今は良かったと思ってる。友美の相手が圭斗で。……あいつなら、友美を幸せにできるって思うから」

「や……私の幸せは」

「友美。絶対だ。絶対に、圭斗といれば幸せになれる。友美も本当はわかってるんだろ?……オレと一緒になっても、誰も幸せになれないことくらい」

「――…っ、でも……っ」

「離れればそんな気持ち、忘れる。圭斗なら……忘れさせてくれるよ」

「――っ」


いやいや、と言うように私は首を横に振る。

兄の言っていることが正しいことはわかっているのに、認めたくなかった。


「だから。兄妹でいるのがいいんだ。これが友美もオレも、みんなが幸せになれる道だ。……わかるよな?」


兄の無理矢理笑う苦しそうな表情に、涙がどんどん溢れてくる。

全身の水分が全部出ちゃうんじゃないかと思うくらいに。


「……何で?何で、私たちは兄妹なの……?」

「っ、」

「そんなの望んでないのに。こんな世界に居たくない。……そんなのに縛られない世界に行きたい……っ!お兄ちゃんをただ好きでいれる場所に行きた……っ!」


私の身体に急激にかかる力。

痛いのに心地いい体温。


「友美……っ」

「お兄ちゃん……っ」


私は兄の背中に腕を回して、力いっぱい抱き付く。

私の身体を抱く兄の腕にも、さらに力が籠る。

時間が止まればいいのに。

このまま地球がなくなってしまえばいいのに。

そうすれば私たちはずっと一緒にいれる。

本気でそう思った。