私を黙らせるように塞がれた唇。


……柔らかくて、温かい唇。

……初めて、触れたもの。


ずっと求めてきた温もりが嬉しくて、しがみつこうとしたのに。

余韻に浸る間もなく、兄は私から離れてしまった。


「っ、悪い」

「――っ」


私はふるふるっと首を横に振る。


謝らないでよ……っ!

キスしたことを否定しないで……!


「何でダメなの……っ?何も悪いことなんてしてないのに……ただ好きな人と一緒にいたいだけなのに。好きなのに……一緒にいちゃいけないの?」

「……一緒にいるだろ?……家族として」

「そういうことじゃない!兄妹としてなんかじゃなくて……っ」

「友美。わかるよな?……オレたちは兄妹なんだよ。……許されないんだ」

「……やだぁ」


涙が溢れてきて、私は両手で顔を覆う。

どうしても認めたくなくて。

でも、どこかでは認めないといけないことはわかっていて。

その反面、このまま我が儘を言い続ければ、兄が振り向いてくれるんじゃないかと期待する。


「お願い……お兄ちゃんの本当の気持ち教えてよ……!」

「……だから、オレはおまえのことは妹」

「お願い!妹ならキスなんてしないでしょ!?」


顔を上げ、逃がさない、と私は必死に兄の瞳の奥を見つめる。

今までこんな風に人の目を見たことなんてない。

でも今は…どうしても兄の気持ちを知りたかった。

見つめていたかった。