「嘘……っ!……じゃあ何で……」

「……」

「そんな顔、するの?」


下唇を噛み締めて眉間に皺を寄せた、兄の苦しそうな表情。

そんな顔して否定したって、何の説得力もないのに。

私が目で訴えると、兄は逃げるように目を閉じ、首を横にゆっくりと振る。


「ねぇ……っ」

「……何でもないよ……何でもないから」

「――……や、」

「……ダメなんだ。おまえはちゃんと……幸せにならないと、」

「っ、おにい……」

「ずっと、そう願ってきたんだ。幸せになってほしいって。……普通の幸せを、掴んでほしいって。オレには……それを叶えられないから」


兄の目がゆっくりと開く。

私を貫く、視線。

そこには、普段の明るくておちゃらけたような兄はいない。


「……圭斗なら、友美を幸せにしてくれるよ。な?」

「……やだ」


私はぷるぷると首を横に振る。


「友美……」

「やだよ、だって……っ!……お兄ちゃんも私を好きでいてくれてるんだよね?そうなんでしょ!?」

「っ……」


無言は、肯定だ。


「だったら……!……私もお兄ちゃんのことが、好きだから……ずっと、好きなの……!好き!」

「……ダメだ、ダメだ……」

「私……っ、結婚なんてできなくてもいい!お兄ちゃんの側にいれるなら、それだけで……幸せなんだよ……?好きなの!お兄ちゃんのことが好き……んっ……!」