「お兄ちゃ……っ!」


私が兄のことを呼んだ瞬間、兄の腕に包まれた。

後頭部を大きな手で包まれて、兄の肩に顔を押し付けられる形になる。


「……友美。声、下に聞こえる。母さんたち起こしたら悪いから」

「だって……っ」

「とりあえず落ち着け」

「……っ」


ぽんぽん、と背中を撫でられる。

……昔からそうだった。

落ち込んでたり泣いてたりする私を宥める時は、こうやってしてくれた。

ずっと変わらない、温かい手。


「…………ほら、あれだ。おめでとう、っていう」

「!やだ、誤魔化さないで……っ!」


私は兄のおちゃらけた声色と言葉を遮り、身体をぐいっと押し退けた。

目に兄の笑顔が映る。

……ひきつった笑顔が。


……そう。

何かを誤魔化す時、兄はこうやって不自然すぎる笑顔を作るんだ。

ずっと見てきたから、私にはわかるんだよ……?


「……ねぇ、ほんとのこと教えて……?お願い……っ」

「……、」

「夢だと思った……でも、違うよね?……好き、って聞こえたの。言ってくれたんだよね……?」

「……何、言ってるんだ?夢でも見てたんだろ?全部……夢だ。夢に決まってる」


まるで、自分にも言い聞かせるような言葉。

そして……