……夢を見ていた。


すごく幸せな夢。


隣には……兄がいる。

私も兄も笑っていて、すごく幸せそうだ。


あれ?

もっと見ていたいのに……

二人の姿が薄れていく――。


やだ、待って……

もっとここにいたいよ――


「……好きだった……おまえのこと」


……え?


突然鮮明に聞こえてきた声に、私の思考は停止する。


今のって、お兄ちゃんの声、だよね?

……今のは夢?

それとも――……


その時、おでこに温かい柔らかいものが触れた。


「……幸せになれよ」


ベッドがギシと音を立て、兄が去っていく気配を感じた。


私は重い瞼を必死に持ち上げて、目を開ける。

薄暗い室内に、普段はいない姿が見えた。

兄の後ろ姿が。


――これ、現実だ。


私は腕をゆっくりと上げ、兄のいる方へ伸ばす。

待って……


「――待って……!」

「――っ!友美!?起きて……?」


私はまだ覚めきっていない重い身体をゆっくりと持ち上げた。


目線の先には、私の部屋にある間接照明でようやく見える兄の姿。

……その表情は、驚きと困惑でいっぱいに見えた。


「お兄ちゃん……」

「……っあ、悪い、悪い。起こしたか?すぐ出ていくから、寝て」

「ね……今……キス、したよね……?」

「……っ!」

「ねぇ!したよね!?何で……っ!?」


明らかに戸惑った表情の兄。

……それは肯定を意味していて。


どうして……?

何でキスなんて、するの?