「……私もお父さんも隼人も。友美が幸せだと思える道なら、応援するから。それがどんな答えでも、友美が幸せだと思えればいいのよ」

「……ん……」

「……でも良かった。相談してくれて」

「へ?」

「友美は一人で抱え込む癖あるからね。あ、そうね。そこもわかってくれる人がいいかしらね」

「……圭くんはたぶん、わかってくれてる。今日だって――」


私が抱えてることをわかってくれたから。

私が楽になれるようにって、軽くしてくれたから。


……圭くんは私には勿体ないくらいの人だ。

私も周りも……幸せになれる相手なんだ。

きっと、幸せだと思える。


……このちっぽけな想いさえ封印すれば。

ずっと、ずっと、捨ててしまえなかった想いを……。


「……私、幸せになれるかな」

「……なれるわよ」


母の優しい笑顔に、私はゆっくりと頷いた。


「…………うん」


……これでいい。

自分のためにも、周りのためにも、圭くんと結婚することが、幸せに続く道だ。


「――ただいまー」

「!」

「あら、隼人。早かったのね」

「独り者は俺だけだったからな。みんな家族の元にさっさと戻ったよ……まったく、付き合い悪くなるよなぁ」

「あんたもさっさと相手見つけなさいよ?」

「けっ。……相手くらい――あ、電話」


兄は携帯を手に取りながら、廊下に出ていく。


「まったく。いつまでもフラフラしてるんだから」

「……」


……相手くらい、何?

結婚を考えてる相手、いるの?


胸がぎゅっと締め付けられる感覚がする。

たった今、圭くんとの結婚を決意したというのに、こんな気持ちになるなんて――。


……イヤだ……。

苦しい……。


――早く、こんな想い、封印してしまいたい。