「後はそうね……想像、かしら」

「想像……?」

「そう。相手との未来をリアルに想像できることも重要なんじゃない?私が結婚しようって決めたのは、お父さんとの未来を想像した時に、自分の幸せそうな姿が見えたから、だから。この人となら何があっても大丈夫だ、って思ったの」

「……」

「その想像の中にはもちろん、友美も隼人もいた。もちろん、お父さんとは何度もケンカしたし、大変なことも多かったけど……今では理想通りの家族になれたと思ってるのよ?」


……理想通りの家族。

その言葉に、私の胸にツキンと痛みが走った。


父も母も兄も。

私の兄への想いを知らない……知るわけもない。

……私のせいで、その理想通りの家族を崩すわけにはいけない……。

この気持ちは絶対に知られちゃいけないんだ。

誰にも。


「……友美は?圭くんとずっと一緒にいたいと思う?未来は想像できる?」

「……………たぶん……」

「そう……それなら、後は友美の気持ちだけね。この人と結婚したい、と思えるか」

「……」

「結局は理屈じゃないからね。人によっては譲れない部分もあると思うし。……大丈夫。友美がどんな答えを出したとしても、圭くんならちゃんと友美のことわかってくれるわよ」

「……」


……私は何を守りたいの?


この家族?

圭くん?

世間体?

……兄への想い?


守りたいものが多すぎて……

でも、守るべきものはすでに決まっていて……


私にとってはすごく大きいものだけど、ちっぽけな私の想いだけで、全てを崩すことなんてできない。


……答えは―――