「……自惚れとかじゃなくて。たくさん考えてくれてる?」

「え?」

「俺のこと。考えてくれてるんだよな?」


じっと見つめられて、私は素直にこくんと頷いた。


「……ん……」

「そっか。……嬉しい」

「へ?う、嬉しい……?」

「うん。……そりゃあ、早くいい返事をもらえるのが一番だろうけど、俺のことを真剣に考えてくれてるその時間だけで、十分嬉しいよ。……好きな女の頭の中を、俺が少しだけでも支配できてるってことだから。……そうなれただけで――」


嬉しい、と圭くんはそう言って微笑む。

たったそれだけで?


「……ね、圭くん」

「ん?」

「圭くんは何で私と結婚したいと思ってくれてるの?私、何もできないのに……」

「……そんなの簡単だよ。友美と一緒に生きていきたいから。これからずっと、何十年後も俺の隣にいてほしいのは、友美だから。友美が楽しい時も悲しい時もどんな時でも、俺が一緒にその気持ちを共有したい。友美が楽しい時一緒に楽しんで笑い合うのは俺がいいし、友美が悲しい時に話を聞いたり慰めるのは絶対に俺がしたい」

「……っ」

「……友美の全部を受け入れたい。友美の全部を俺に預けてほしいんだ」

「圭くん……」


そんな風に思ってくれてたんだ……。

……嬉しくて泣きそうだ。


圭くんの右手が私の頬にフワリと触れる。


……圭くん?


悲しそうな笑顔の圭くん。

何で、そんな悲しそうな表情するの……?


「……独占欲強くて……ズルくて、ごめんな」

「!……そんなこと……」

「あるよ」

「ん……っ」


ちゅ、と圭くんの唇が降ってきた。

すごく優しくて。

圭くんの気持ちが伝わってくる、キス。


……好き。

その気持ちは嘘じゃないから。


……私は自然と圭くんの背中に腕を回して、優しいキスに酔いしれていた。