「――泣き虫友美」

「へ……?」

「あれ、食う?」


圭くんの指差す先には海の家にあるジェラート屋さん。

その時、私のお腹が波の音とハモるようにグゥ~と鳴った。


「!」

「……違った。食いしん坊友美だった」

「ひ、ひど!」

「昔から花より団子だもんな?」


くくっ、と圭くんが笑う。

その笑顔に私の気持ちも一気に緩んだ。


「……圭くんだって食いしん坊のくせに」

「言えてる。じゃあ、食いしん坊同士行きますか。もちろん食べるだろ?」

「……うん。食べる。……何があるかな」


ぐしっと鼻をすすりながら、ジェラート屋さんに出ているのぼりを覗く。

急に元気になった私をチラリと見て、圭くんは呟く。


「……超ゲンキン」

「……ど、どうせ、色気より食い気だもん!」

「ふ、開き直ってるし。うん、でも。それでこそ、友美だな」


くすくすと笑う圭くん。

こうやって気持ちを楽にさせてくれるのも、圭くんは得意なんだよね。

圭くんと一緒にいれば、私はきっと私でいれる。

たくさん甘えられると思う。


でも、私は何もしてあげられてない。

何をしてあげればいいのかもわからない。

心だって、完全にそこにあるわけでもない。

こんな私じゃ、圭くんに釣り合うはずもない。


何で圭くんは私と結婚したいなんて思ったんだろう……。