「元気な子だったな」
「……」
「……友美?」
「……あ、うん」
私は女の人に向けていた目線を圭くんに移す。
……そこには柔らかい笑み。
ぽん、と圭くんが私の頭を撫でる。
「……行こっか」
「……ん」
風気持ちいいな、と言いながら海を眺めて圭くんがゆっくりと歩き出す。
私はその後を歩く。
……複雑な気持ちだった。
ぐるぐると頭の中を回るもの。
結婚という言葉。
子どもという言葉。
お幸せにという言葉。
そして、鮮明に想像できてしまったパパ姿の圭くんと子どもの姿。
……その想像の中の二人を見守る私の姿。
昨日までは全く想像できなかったのに……。
しかも違和感がなくて――。
未来を想像できてしまったのは圭くん。
……でも。
やっぱり強く好きだと思うのは兄のこと……。
私の心はどこを向いているんだろう……。
どこに向かいたいの?