「――!」
不意に頭に浮かんでしまった映像に、どきんと心臓が跳ねた。
……今、私、何を考えた?
ぽんぽんと圭くんが男の子の頭を撫で、笑いかける。
「ちゃんと前向いて歩けよ?お母さんに心配かけないこと!」
「はーい!」
「よし。じゃあ、いい子にしろよっ、と」
「キャーッ」
ぐっと男の子の身体を持ち上げ、くるりと1回転。
「あ、こら、暴れるな」
「キャッキャッ」
男の子のバタバタと動かす足が肩に当たったらしく、圭くんがちょっと顔をしかめたのが見えたけど、すぐに笑顔に戻った。
ストンと男の子を地面に下ろし、お母さんの方に行くよう促す。
「じゃあな?」
「うんっ!」
「遊んでもらっちゃって、ありがとうございました」
「こちらこそ」
「……お二人、すごくお似合いですね。素敵なカップル……あ、もうご結婚されてるのかしら」
「!」
思わぬ言葉に私はびっくりしてしまった。
そんな風に見えるんだ…… 。
少し間をおいて、圭くんが柔らかい笑顔で答える。
「いえ……、結婚は……。でも、ありがとうございます」
「これから、という感じかしら?ふふ」
「……」
「ままー、はやくぱぱのところにいこ!」
「あ、はいはい。じゃあ、お二人お幸せに」
ぺこっとお母さんは頭を下げて、男の子の手を引いて歩いていく。