「海ー!来るの久しぶり!」

「やっぱり、そうなると思った」

「え?何!?」

「いや、喜んでくれて良かったなって」

「うん!海大好きだもん!」


目の前に広がる海を見てテンションが上がる私。

そして、それを見て笑う圭くん。

こういうのっていいな、って思う。


今日は天気も良くて、カップルや夫婦、家族連れの姿も見える。

子供たちがキャッキャと走り回る様子に、自然と気持ちも顔も緩む。

あの老夫婦も幸せそうに寄り添っている。

いいな、素敵。

私もあんな風になりたい。


「ちょっと歩く?」

「あ、うん!」

「天気いいなー。こんな風に外歩くの久しぶり」

「ずっと忙しそうだったもんね?」

「ん、まぁ、自分で決めたことをしてるだけだけどね。って言っても、まだまだだと思うけど」


歩きながら圭くんが腕を天に向かって伸ばす。


――自分で決めたことをしてるだけ。


そう言ってのける圭くんは本当にカッコいいと思う。

尊敬するし、そんな風に言えたらいいなって憧れもする。


……私は踏み出すこともできないのに。


「ん?俺の顔、何かついてる?」

「あ、ううん」


じっと見ていた私の視線に、圭くんが首を傾げた。

その時。

キャッキャというはしゃぎ声と共に近付いてくる、パタパタというかわいい足音が聞こえてきた。

後ろを向いて向かってきた男の子がバランスを崩す。


「わ」

「――おっと」


圭くんの手が男の子の小さな身体を包む。

きょとんとした表情の男の子に、圭くんはにこりと笑いかけた。