看板をたよりに歩く。
あった。
一度来たかったお店。
こんな日に、こんな偶然見つけるとは思わなかった。

からり、と引き戸をあける。
マスターと目が合う。

「あれ、いらっしゃい」

何事もない笑顔が向けられて、あたしはほっと息をはき、
雨に濡れたコートを脱いで、髪をまとめた。