「…じゃあ、ごめんなさい。ここで!」

あたしは、数歩前に視界の端に入った看板へと踵を返した。

「えっ?何、突然」

彼の驚いた声。

履き慣れないヒールの音が響く。

追いかけてくるかしら。
少し振り返ったら、機嫌悪そうに猫背になった彼が、
そのまま歩いていくのが見えた。

そんなものよね。そんなものかな。