ゆっくりと目を開ける。見たことのない風景があたしの目に映ってきた。ここは一体どこなんだろう？

「気がついたか？とりあえず意識なくしちまってたから病院連れてきた。事務所に何度連絡しても出ねえし、慌てて戻ってきたら悲壮な顔してぶっ倒れたんだよ。覚えてるか？莉央」

そっか。ここは病院。だから真っ白な天井。さっきは気づかなかったけれどそういえば点滴も刺さっている。あたし、意識を失ったんだ。

「ごめんなさい。職務怠慢で」

「職務怠慢ってそんなこと誰も気にしてねえよ。良かった。今日の現場が近場で。それより、莉央何があった？なんか変わったこととかあったのか？」

変わったこと。電話。あの電話からだ。思い出すとまたパニックに陥りそうになったあたしを春馬が制してくれた。「大丈夫か？落ち着け」と何度も言ってくれる春馬の声に少しだけ落ち着きを取り戻すことは出来たけれどあの蘇った映像は消えることはない。

「電話、電話が掛かってきたの。それで仕事の電話だと思ったら、気持ちの悪い男の人の電話だった」

さすがに内容までは話せなかったけれど春馬は察してくれたみたい。これからは電話に出なくてもいいと言われた。