みんなは口を揃えてこう言う。

『美和ちゃんは強いんだね。』

『精神強いね。』

強くないよ。全然。

本当は叫びたいくらい泣きたい。


でも、みんなの前では泣けない。


あたしだけが辛いんじゃないから。

あたしだけが苦しいんじゃないから。


みんな同じ。

もとを失ってみんな辛いのに、あたしだけ大泣きなんて出来ない。


だから、あたしは海の夕日に向かった。

ここなら人通りも少なく誰も見ていない。

透き通る海は濁ったように黒く見えて、夕日どころか、真っ黒い雲が覆われていて空が全く見えない。


「・・・あたしみたい。」


もと。

もとはあの日あたしに何を伝えようとしたの?

ねぇ。どうして、あたしをおいていったの?


「ねぇ、もと。答えてよ!」


そのとき、涙すらでなかったあたしの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。