さすがに、10月末に肩だしのドレスはキツイ。
肌に突き刺さるような冷たい風は体力を吸い取っていくみたい……



「こんな格好でバカだよね…ははっ。あ、あたしじゃあ戻るね…」



そう、ドアノブに手を伸ばした瞬間────



あのときと、劇のときと同じように……

グッと引き寄せられた────



ほんの数秒。何が起こったかわからない。

でも、そのあと…あたしの脳は思考停止した。





「………ここにいろよ。」


壊れそうなくらい、切ない低い声があたしの耳元から聞こえた。


腰に回された腕が熱い。

強く、でもどこか優しくあたしを包み込んでいる。


なにこの状況!?



「い、いつき……またからかってるんでしょ…?」


そう聞いても返事は返ってこない。


でも、その代わり…ドクドクという音が伊月から聞こえた。