あたしはその姿に見惚れた。

素直にかっこいい、と思ってしまった。


伊月は少し目を細めて微笑んだ。


「なんて、美しいんだ。わたしと一緒に踊ってくれませんか?」


…美しいのはどっちよ。


少し横目で観客席を見ると、顔を真っ赤にして今にも泣きそうな女の子が……


そうだよね。伊月にこんな言葉をかけらたら……


あたしも、“普通”に伊月と出逢っていたら多分……好きになってたかもしれない。

あの女の子のように顔を真っ赤にさせてたかもしれない。


(おい、なにボーッとしてんだよ)

と小さな声が伊月から聞こえた。


あたしはその言葉で我に返り、差し出された伊月の手をとった。



「…よろこんで。」


そこでメロディーが流れダンスをする。

なれないガラスの靴に見たてたヒールをはいているせいで足がおぼつかない。


何度もこけそうになるあたしを伊月は平然としてフォローしてくれた。