「最後の劇は三年五組による、シンデレラです。」


そう、アナウンスされ体育館中に拍手の音がこだまする。そしてゆっくりと幕が開いた。


体育館フロアを見ると溢れんばかりの観客がいて、あたしは息をつまらせた。


大丈夫……。あたしはシンデレラ。
自信を持て。


数秒目を閉じパッと目を開いたら、少しだけ世界が変わった。



すると、さっきまでの緊張なんて吹っ飛んでいた。






「シンデレラ!掃除が終われば次は雑巾がけよ!」



「…かしこまりました。」



相変わらず、桃香の継母役のハマりようには笑った。


伊月との練習の成果があってからか、片言ではなくシンデレラの気持ちになって…あたしがシンデレラになったつもりで演技をした。



────そして舞踏会のシーン


伊月が舞台袖から現れたその瞬間、大きな歓声と女子たちによる悲鳴が体育館中に響き渡った。


そりゃ、そうだ。


だって、王子様の衣装を着た伊月はまるで……童話から飛び出してきた本当の王子様みたいだったから。


いや、王子様だ。