「ほら、泣き虫。行くぞ。」


あたしの鞄を伊月はひったくるとあたしを引っ張りそのまま病室を出た。



「ちょっ!ちょっと。だめだよ!今日は安静にしてなきゃ!お父さんに怒られちゃう…」


廊下で人にすれ違うたび周りの人はあたしたちをジロジロ見ている。



「うるせーな。そんなもんどうだっていいんだよ、ほっとけ。」


「……でも…ん───」


すると伊月はあたしの口を手のひらで抑えた。


「ちょっと黙ってろ。うるさくするとバレんだろ。」


「ひゃ!?ひゃなせー!びゃか!んんんー!」
(は!?離せー!バカ!だれかー!)



あたしは伊月に口を抑えられたままタクシーに乗せられた。