「メーン」


見事な引き面だった。


主審、副審の旗が一斉に挙がった。


「面あり。勝負あり」




……小百合先輩が勝った。


コーチから言われて、いつも練習していた技が、ここにきて役に立ったようだった。


今の技はずっと練習してきた。


実際に使うためというよりも、逃げない気持ちと、試合中は優しさを捨てろという教えを、体感させるための一例としての技だった。


先輩の背中はすごく大きかった。


追いかけるしか出来ないような、大きな背中。


チームとしては負けてしまったのに、先輩は最後の最後で魅せてくれた。


あんなにかっこよかったにに、負けたのは私たちだったのに、私は泣けなかった。


だって、一番悔しいのは小百合先輩で、私たちにはまた来年があるから。


その小百合先輩が「ありがとう」と笑っているのに、私たちが泣けるはずなんてないよね。