「はじめ」


審判の声と同時に、小百合先輩は動いていた。


一瞬、会場の時間が止まったような錯覚を覚えた。




「……面あり」


少しの間の後に、審判の旗が一斉に挙げられた。


小百合先輩の見事な飛び込み面が決まった。


蹲踞から立ち上がってすぐで、まだ相手の気が完全に入りきれていないところを狙ったみたいだった。


卑怯だと思う技かもしれないけど、これをしっかりと決めてくる実力があるのが小百合先輩なんだよね。





「2本目」


審判の声を合図に、今度は相手もしっかりと気を張ってきていた。


もう、さっきのような技は通用しないし、もちろんそんなこと小百合先輩が一番わかっていると思う。