お互いに礼をして、試合場に入った。


そして、相手から目を逸らさないまま、蹲踞し、主審の声を待った。



「始め!」


……私は、負けない。


気合を入れて、逃げないように前に前に攻めてはいたものの、相手はすごく大きい。


どうやっても押し負けてしまう。


あっ、と思った時には間に合わなかった。



「面あり」


相手校の白旗が3本上がった。


鍔迫り合いで押し負けて、崩されたところを引き面。


ダメだ。

せめて、取り返して、先輩に繋げないと。


そこからは、慌てて前に詰めすぎたりはせず、チャンスを窺った。


真正面から突っ込んでも、私が勝てるはずがないことなんて充分に理解している。





体が勝手に動いていた。


「小手あり」


主審の声に、審判に手元を見ると、赤旗が挙がっていた。





「勝負」

――ピィーー!!


試合再開の合図の直後、試合終了の笛が鳴った。


ギリギリで返せたんだ。


でも引き分けだった。