コーチの話も終わり、今も続いている試合を見学するために、会場へと戻った。


いや、戻ろうとした。


そこでいつの間にかいなくなっていた小百合先輩に気がついた。


辺りを見回すと、階段の下付近で探していた姿を見つけた。



「さゆ……」


声をかけに行こうとして、見えた光景に言葉と、動きが止まった。


だって泣いている小百合先輩が見えたから。


そして、泣いている小百合先輩を励ます、前田先輩がいた。




――ズキっ。


私の心が、悲鳴をあげた。


いや、いや、いや、私、今何を思った?


違う、そんなことない。


私たちの前では泣かなかったのに、前田先輩の前では泣いていたことが、私には弱さを見せてくれなかったことが、寂しかっただけだよね。


そう言い聞かせた。


嫉妬したなんて、こんな状況のときに認めるわけにはいかなかった。


私たちの前で強くいてくれた先輩に対して、嫉妬するなんて、自分が情けなくて仕方ないから。