店でクリスティーヌに紙代を渡すと、ソルティアは別用があるため店から離れた。

 王宮に行くときに使う、新しい髪留めを買おうと思っていたのだった。

 だから、クリスティーヌからの誘いは絶妙なタイミングだったのである。

 足早に髪留めの店へ向かう。店の近くの角を曲がった時だった。

 ドンッ

 鈍い音がして、ソルティアは地面に尻もちをついた。

「ったたぁ…」

 腰を擦りながら立ち上がると、すぐ近くでドレスの少女が倒れているのが見えた。

 年の頃はクリスティーヌと同じくらいだろうか。淡い紫のドレスの彼女はしかめっ面をしながら使用人らしき人物の手を借りて立ち上がる。

「…オマエ、前を見て歩いてなかったのかい!?」

 怒鳴られて、ソルティアは首を竦めた。

 使用人の女は恐ろしいくらいの剣幕でソルティアに歩み寄ってくると、いきなり胸座を掴んできた。

「った…」

「オマエがぶつかって転ばせた相手は王宮の重臣フィオーレ様のご令嬢なんだよ!わかってるのかい!?」

 ソルティアは驚いて服を整え、少女に向かって頭を下げた。