「……」

『オレんち来いよ』──川崎さんに耳元で囁かれ、

男免疫のないあたしは興奮して倒れたかもしれない。

とは、口が裂けても言えない。



不意に会話が途切れる。

あたしと洋介は手を繋いで歩く。(正確には洋介が手を離してくれない)

懐かしい。

つき合っている頃も。

結婚している頃も。

洋介とよく手を繋いで歩いた。



昔のことを思い出していたら──



「舞」

背後から声がした。

振り向くとお父さんが立っていた。


「おっ。洋介君、久しぶりだね」

「お久しぶりです。こんばんは」

洋介がお父さんに頭を下げた。