「洋介くんが、あたしの名前だけでも覚えててくれたのも、嬉しかったよ」

「……」


彩さんの名前を覚えていたのは、舞と同じ漢字一文字の名前だったからだと思う。

水を差すようなことは言わないけど。


「あたしのこと改めて自己紹介してもいいかな?」

「いいですよ」

「平田彩。28歳。職業は看護師。彼氏は約一年くらいいなかな」


彩さんは言葉を続けた。


「どう?覚えてくれた?」

「覚えましたよ」

「洋介くんも自己紹介してよ。何か自分だけって恥ずかしいよ」

「澤村洋介。27歳。建設会社に勤めてます。バツイチです」

「これで洋介くんと、本当の知り合いになれたような気がする」


そう言って、彩さんは微笑んだ。