弱小バスケ部の奇跡






数日後の部活にて。



「ちょっと聞いてちょっと聞いて♪」


「テンション高ぇぞおい」



早速未希にツッコまれる。




「あっれぇ? 棗ちゃんがハイテンションなんて珍しーっ! なんかあったの?」


「黙っとけアホ」


「ひどっ」



珍しいとは、失礼な。




「えっ、棗ちゃんどしたの?」


蒼乃が目をキラキラ輝かす。





ほらごらん、和香さん。


この純粋で可愛らしい瞳を。





「なに隠してんのー? キャプテンには言いなさ「じゃじゃじゃじゃーーーーん!」





美凪、ごめんね。

これ以上待たせたら悪いから。









後ろを向いて手招きする。



少し小さくなりながら体育館に入ってきた可愛らしい女の子。



「…は、はじめ、まして。佐倉 美羽(さくら みう)です」


「皆っ、美羽ちゃんに感謝しなさいよ! あたし達のためにわざわざスコア係で来てくれることになったんだから!」


「「「「うそっ」」」」




…嘘言ってどーするよ。

皆して声揃えちゃって。




美羽ちゃんはぺこりとお辞儀をした。




「はじめまして! ウチはキャプテンの大谷 みな…
「ウチは原 未希。わざわざありがとう」




美凪が名乗り終わる前に割り込んだ未希さん、あなた最高。


大拍手を送らせていただきます。





「私は加藤 蒼乃! よろしくね!」



おぉ、蒼乃、美凪にもう1度チャンスを与える気ゼロ。

いつもはそんなことしない子なのに…。



女って恐ろしい。




「杉瀬 和香です! よろぴくぅ♪」



和香は親指を立てて自己紹介。


あなた、いくらなんでもそれは……





「「「「チャラすぎ和香ッ!!」」」」




ぅおあっ、声揃ったー!




……ん?
…っつーことで











「和香、100円プリーズ♪」


「なぜーーーッ?!」


「んじゃウチは1000円で〜」





キャプテン美凪、まさかの参戦。





……ていうか、請求額高ぇ…………


あたしはちゃんと気使って安めにしといたのに、なんだこの差は。

10倍じゃんかよ10倍。





「えぇーーっ、美凪ちゃんはパス!!」


「なんでよ」


「えーっと、なんか……むかつくから?」


「なんだその理由!? しかも疑問形とかなに?!」





……結果、あたしの100円は決定?


決定。

よっし。





「ごめんねー美羽ちゃん。キャプテンがあんなんで」



あたし、蒼乃、未希でぺこり。



「っ、全然大丈夫ですよ! 賑やかで楽しいです」







その引きつりぎみの笑顔を写メ撮って、是非とも美凪さんにお見せしたい。



情けないぞこら。










───5月初め。





今日も呑気にダラダラとボール遊びをするM中バスケ部。




あたしは未だボールに嫌われてます。


早く懐けやこら。





…あ、あたしが下手なのよね。

ごめんなさい。




あー、未希が羨ましいよ。



ほら見てッ


くるって回ったよ!

しかも速い!!



そのままレイアップ──






…おぉ、さすが、ナイッシュ。





あたし、思わず拍手。



未希は「は?」ってカオ。





かっけー。










その時───



「っきゃぁぁぁぁあーッ!!!」


「んあ? なに、ぅあぉッ?!」




───ゴンッ




顔面直撃、愛しのバスケットボールちゃん。






…いや、こんなん思ってる場合じゃなーい




「いってーぞこるあッ!!」


「ひいぃぃぃぃぃっっ、ごめんごめんごめんッッッ!!!」




あたし、マッハ20で和香にタックル。







……のはずが、




和香はビクともせず、あたしが吹っ飛ばされた。




な、なんなんだコイツ。


そんで、その「なぁに、どうしたの棗ちゃん?」的な顔やめて。




元はと言えば、アナタがいけないんだからね!



ヘタしたら鼻折れるっつの。






……にしても、今のケッコーきた。



ジンジンするー…









「なっ、棗ちゃん大丈夫?!」


蒼乃が猛ダッシュで駆け寄ってくる。




…蒼乃優しいよ。







……ねーえ、和香サン?





「ん、大丈夫っす。ありがと」


蒼乃の手を借りて立ち上がる。





すると、




「いやっふーッ!! こんちくわーーっ」


「「「「………。」」」」





皆一瞬動きを止めてその人を見たけど、すぐになにもなかったかのように練習(?)を再開した。




あたしも、見なかったことにする。






「…うええっ?! ガン無視ぃ?!」



…ヘタレキャプテン、美凪。


美羽ちゃんを連れてのご登場です。





「こんにちは先輩!」



美羽ちゃんかわいーい。


わざわざありがとね。







……ん?


…え、ちょっ、











あああ蒼乃?!


なぜ泣く?! えっ?

なにがあった??!




「蒼乃先輩っ、どうしたんですか、大丈夫ですか?!」


びっくりした美羽ちゃんが蒼乃に駆け寄る。




「…蒼乃…〝先輩〟…………」


蒼乃が小さく言った。




……先、輩…?






………っああ!

そうだった、思い出したよ蒼乃!


始業式の日に、先輩って言われたいとかなんとか言ってたね。




となると、泣いてる理由は…





嬉し泣き、感動?




くっそ、こんにゃろう可愛い


なんだよそれーっ



めっちゃ純粋、ピュアガールね蒼乃。









「やーだ蒼乃ちゃん泣いちゃってー♪ なになにどしたのぉ?」


「こらバカっ! こんのKYッッ」


「きゃーっ、棗ちゃんにいじめられたぁぁぁあっっ」


「言ってろ」



いちいちめんどいぞコイツ。




ったく、せっかく蒼乃が夢(?)叶って感動してる時に………






「はーいはい! ちょっと皆来てーっ! 集合ッ」



美凪がパンパンっと手を叩き、美羽ちゃん含めて全員集合。





「…じーつーはー♪ ビッグニュースなのだよ皆の者っ。聞きた…
「もったいぶんないでさっさと言って?」


「……あーい」



おぉっ、未希ナイス!

うわぁ超尊敬。




てかキャプテンと副キャプテンの立場逆転してるよねこれ。





まぁいいや。




………で、なに、美凪。


そのビッグニュースとやらは。












「廃校直前の時期に、『チュウタイレン』って大会があるんだって!」


「「「「…〝チュウタイレン〟?」」」」




美凪と美羽ちゃんを除いた他4人が、怪訝そうに眉を顰めて首を傾げる。




なんじゃそりゃ。


チュウタイレン、だ?



初めて聞いたよそんなの。






…あ、バスケの知識ない奴だから当然か。




……いやでも知識豊富な未希でさえ「?」ってカオしてるし………





なんなんだ、それ。



〝チュウタイレン〟って……