「打ってからすぐ手落とすと、それの影響でボールがブレるの。せっかく入ったかもしれないのに、それはもったいないでしょ?」
「うん」
そういうことか。
なるほど。
「だから、打ったあとも手は残して」
「わかった」
あたしは言われた通り、アーチ高く、手を残してボールを放った。
…っ!
あ、なんか、綺麗かも。
ボールは真っ直ぐゴールに向かう。
───スパッ…
「ほら。ナイッシュー」
うそうそうそうそっっっ
え、スリーって、こんなにもすんなりできるもの?
………うぅん。
あたしだけの力じゃない。
周りに助けてくれる人がいたからだよね。
「おっはよーっ」
「あ、和香、おはよう」
どうやら、集まってきたみたいだ。
「棗ちゃーん!」
「あっ、蒼乃!」
「ほんとに手伝わなくてよかったの?」
「うん、大丈夫」
蒼乃はいいやつだ。
どこまでも仲間思い。
「おはよー」
「おはようございます!」
未希と美羽ちゃんも到着。
さぁ、今日も練習開始だ。
「今日から2対1をやります」
いつも通りに、シュート練習までのメニューを終えて集合。
美凪が言った。
2対1……?
なんとなく意味合いはわかる。
でも、具体的にどうするのかは謎。
「美羽ちゃん、2対1わかるよね?」
「はい、大丈夫です」
美凪がそう聞くと、美羽ちゃんはしっかりと頷いた。
「よし、じゃあ、ウチと未希と美羽ちゃんで手本やるから! 見てて」
美凪は、未希と美羽ちゃんがオフェンスね、と言った。
ボールは未希。
美羽ちゃんは逆サイドにいる。
そしてその向かいにはディフェンスの美凪。
一体、なにが始まるんだ───
「美羽ちゃん、いくよ」
「はい!」
ダムッ
未希が鋭いドリブルでゴールに向かう。
と同時に、美羽ちゃんもゴールに向かって走り出す。
すぐさま美凪は未希のドリブルコースに入る。
未希はそれでも強引にレイアップ───
「っ!!」
え───
未希はそのままレイアップをするかと思いきや、空中で美羽ちゃんにパスを出した。
美羽ちゃんはそれを受け取り、ジャンプシュート………
───バシンッ……
「…えっ…」
美羽ちゃんの手にボールはない。
ボールは美凪の手によってはたかれた。
そんな、だって今絶対打つと思ったのに…
それなのに、美羽ちゃんのシュートカットするだなんて……
美凪………
フロアに転がったボールを美凪が拾い上げた。
「今のが2対1。オフェンスが2人でディフェンスが1人」
これが2対1か。
「じゃ、ローテーションでやるか。まずは未希と棗がオフェンス。ディフェンスは和香」
「よし、棗。勝つからな」
不意打ちで未希に背中を叩かれ、一瞬びくりとした。
でもすぐに向き合い、しっかりと頷いてみせた。
よし………
「棗、ちょいちょい」
「?」
今から始めるぞという時に、美凪に呼ばれた。
「なに?」
「せっかくだから、スリーの練習も兼ねてやってみて。試合でもスリー打ってもらわなきゃだからさ」
……あ、そっか。
あたし一応、スリーポインターなんだもんね。
「うん、わかった」
「未希が上手く和香引きつけてくれるから、棗は0°に行って。手と声出して」
「うん」
よし、練習の成果見してやる…!
「棗、行くよ」
「ん、オッケー」
未希がドリブルを始めると、すぐさま和香がつく。
───よし、今だ
「未希ッ!」
あたしが呼ぶと、未希は一瞬こっちを見てから、ノールックでパスを出した。
よし、完全フリー!!
あたしは0°からシュートを放った。
───ガンッ
「リバンッ!」
ウソだ───
「ナイスリバン和香!」
「やったぁ♪」
ウソだ、ウソだろおい………っ
外した…………?
0°からのスリーは絶対決められるやつ。
なのに、あたし今───
「慣れだよ慣れ。初めっからそうそう決まるもんじゃないし! 届いただけすごいよ!」
美凪があたしの肩をぽんぽん叩きながらそう言う。
違う。
違うんだよ。
例えこのスリーがそうそう決まるもんじゃないにしろ、時間ないんだよ……ッ
もう、2週間切ってんだよ…………ッ
初めてだろうとなんだろうと、決めなきゃなんないんだよ……………ッッ
「よーし、じゃ、次は棗と和香がオフェンス。ディフェンスは蒼乃」
「棗ちゃん、ドリブルお願いしてもいい?」
「………あ、あぁ」
ダメだ。
今のは一旦頭から追い出して、今はこれに集中しなきゃ……