弱小バスケ部の奇跡






……っ、そうか!


リングの手前に当たって跳ね返ったってことは、アーチが低いからだ。

低いからリングに当たる。




そういうことか!


「ありがとう美羽ちゃん」



あたしはアーチを意識して、もう1回シュートを打った。






───ガンッ



「あっ、さっきよりもずっといいです! アーチ高い方が、シュート成功確率上がるんだそうですよ」




アーチ高くした。


膝使ってる、体全体で打ってる。




じゃああとは、真っ直ぐ打つだけ。


真っ直ぐ打ちさえすれば、シュートはもうすぐ決まるかもしれない。










───ガンッ


「あ、今の惜しいです!」




───ガゴンッ


「もう少し回転かけた方がいいかもしれません!」




美羽ちゃんが的確に指示してくれるものの、あたしのシュートは未だ1本も決まらない。





───ダンッ



くっ。

エアーボール。




なぜだ、なぜ真っ直ぐとばない。


真っ直ぐとべば、距離は届いてるから入るはず。




あたしには、できないのか?


この、スリーポイント。




……っていやいや!


なにを考えてるんだ。

集中しろ集中…………










───ガンッ


くそ……





───ガゴンッ


あっ、今の惜しかったのに……っ





───ダンッ


っ、エアーボールはナシだ!





黙々と練習を重ねるも、たぶん70本くらい打ったシュートのうち、入ったのは0本。




なんでだ………っ


レイアップも、ミドルも、ジャンプシュートも、フリースローも………



打てば入った。

なのにこのスリーポイントは…………




入る気がしない……………








美羽ちゃんも気を遣って、ただあたしを見守る程度になった。




っ、入れ………ッ





───ガンッ



リングの奥に当たり、そのまま向こうにとんでいくボール。




「ファイトです棗先輩!」


そう言いながら、美羽ちゃんはボールを拾ってあたしに渡してくれる。



「ありがとう」



そうしてまた、0°に戻る。






それから部活が終わるまでずっと打ち続けたけど、結局この日は1本も入らなかった。












翌日。


あたしは蒼乃に断り、先に体育館に行かせてもらった。




「えぇっ、それなら私も手伝うよ?」


って言ってくれたけど、丁重にお断りした。




これはあたしのことだから、蒼乃に迷惑はかけたくない。




あたしは集合時間の1時間前に体育館に到着した。




ストレッチをして、ボールを出し、ゴールも下ろす。










昨日の夜、ちょっとイメージトレーニングしたんだけど、どうかな。



あたしは0°に立ち、ゴールを見据える。





───ガンッ


…っあ………




───ゴゴゴゴ………ダン…




っ、今のっ、今の惜しかった!!



ボールはリングに当たって跳ねたものの、ボードに助けられ再びリングへ。



リングの上を回転したが、結局はフロアに落ちた。





なんか、すごい、いい感じ、かも───











よし、もう1回。





───ガゴンッ



あっ!

今1回入ったのに!




よし、もう1回───






───ガン…ガン……





───バサッ………



「っ!」





え、今入った?

え、入った入った!?





………入ったよ。




「いよっしゃぁぁぁぁぁあっっ」



あたし、ガッツポーズ。









よし、今の感覚で、もう1回。






───スパッ



「!!!!」



決めたのはあたし自身なのに、あたしが1番びっくりしてる。



う…そ。





それから、あたしの勢いは止まらない。


1回決まり出したら、続けざまにどんどん決まる。




怖いくらいに、自分が自分じゃないみたいに。




左右の0°は、もう成功確率80%くらいにまでなった。










でもまぁ、角度がつくと途端に難しくなるもので。



45°に挑戦中だけど、なかなか決まらない。


さっき奇跡的に1本決まったけど、それ以降はさっぱり。





「っあ! 棗!」


声が聞こえてそっちを見ると、狭い廊下を美凪が走って来た。



「美凪、おはよう」


今は一応昼前なんで、挨拶はおはよう。




「おはようって、棗。いつからいたの!?」



美凪はあたしを、なぜか疑いの目で見る。


いやいやいやいや、なんもやらかしてない!!

ただスリーの練習してただけ!!!