弱小バスケ部の奇跡






「まずは打ち方から。前にパス練したでしょ? 打つ時はあんな感じ。手首のスナップ。親指に力を込めて回転かけて」



美凪はそのままシュートを打った。




───パスッ


美凪の放ったボールは、バックボードに当たり見事に決まった。




「まずはゴールに近い位置から練習した方がいいかも。いきなり遠いとこじゃ入んないから」



美凪はそう言うと「じゃあ、練習始め!」と言った。




あたしはさっきのゴールに行き、近い位置からシュート練習を始めた。










さっきの美凪みたく、手首のスナップきかせて、親指に力込めて回転かけて…………



そうして放ったあたしのミドルシュート。








───ガゴンッ


「あちゃー…」



見事に跳ね返った。




………練習あるのみ!

よし、も1回!!





あたしは、さっきよりも丁寧にシュートを打った。




打った瞬間、これは「入る!」と思った。


ボールは真っ直ぐにゴールに向かって弧を描く。













───ガン、ガン……




───ドン




……また外した。

今絶対入ったと思ったのに。





「惜しいよ、今の」


「え」



振り返ると、そこには美凪が立っていた。


「バックボードのさ、ほら、あの黒い横の縦線。あれに当てるように打ってみなよ」


「…あ、うん」



あたしは、外してフロアに転がったボールを拾い上げ、もう1回ゴールに向かい合う。




しっかり狙って、シュートを打った。








ボールはさっきと同じように、綺麗な弧を描く。






───ガンッ




───パサッ




「…入っ……た?」


「ナイッシュー棗!」


美凪はそう言うと「繰り返せば慣れるよ」と笑って和香の方に歩いて行った。





……よし、も1回。


あたしは何度も何度も、シュートを打ち続けた。









翌日。

土曜。



「あっちー」


「うん…私、なんかもう疲れちゃった」





現在時刻、9時30分。



まだ最高気温になるには早い時間帯なのに、もうすでに、太陽はあたし達を容赦なく照らしている。



まだ6月中旬なりかけだってのに、もう真夏かよ…。




あたし達の住むこの村は、例年この時期、割と涼しい方。




……なのに、こんなだ。


もう暑くて、学校まで歩く気さえ奪われかける。







体育館に入るなり、さらに顔を歪ませる。



「………」


「………」



自然と無言になる、あたしと、蒼乃。




その時、どこからか物音がして、あたしはそっちを向いた。



「あっ、おはよー…」



そこには、顔を真っ赤にしながらボール籠を引っ張り出す、美凪がいた。


他はまだ来てないみたいで、体育館には美凪1人だけだった。



「もーうあっつい! 窓開けよ窓!」




……暑いとか言ってる割にめっちゃ走ってるじゃん。



そんな美凪を見て、顔を見合わせて笑ったあたし達は、エナメルをフロアに置くと窓を開けるため走った。








「しゅうごーっ!」


「「「「はい!!!!」」」」



未希と和香と美羽ちゃんも来て、全員揃ったとこで。




「今日はまず、ジャンプシュートから練習ね。昨日のミドルシュートに慣れたら、距離は掴めてるはずだから」



そう言うと、美凪は未希を呼んだ。



「未希」


「? なに?」


「未希はもちろんジャンプシュートできるでしょ?」



そう言われた未希は、少し大きめの声で言った。


「当たり前でしょうが! んなもん、すぐにできるわ!」




……『んなもん』…ですか…。



やはり、神様は違うね。

言うことが違う。








若干怒ってる未希を見た美凪は、安心したように頷いた。



「よし、じゃあ未希も手伝って。今日はもう1つ練習したいことがあるから」



美羽ちゃんは察したように、あたし達1人1人にボールを渡してくれる。




「じゃ、蒼乃と和香はウチが教えるから、未希は棗をよろしく」


「よっし、棗! 10秒でできるようになれッ」


「無理です無理です!!」



そんな未希のあとについて、あたし達はゴールに向かった。








「まずは、1番簡単なゴール下から」


未希はゴール下のジャンプシュートをして見せる。



美凪のもすごい上手かったけど、未希のもなかなか、というかかなり上手い。




「美凪も言ってたけど、ジャンプして最高点に達した時に打つ」


「うん」


「じゃ、やってみ?」


「うん」




あたしはゴール下に行き、軽くドリブルをしてからジャンプした。


あたしの放ったシュートは、バックボードの1番上に当たって、変な外し方をした。