笹原さんは微笑む。

すぐ側で狙っている人って──…

まさかまさかだよね。


「笹原さん、あの…」

「例えばの話なんだけど? 本気にしないでよ、ね?」

「……」


その時、仕事開始の予鈴のチャイムが鳴った。


そして、笹原さんはそれ以上口を開かず、事務所の方へと向かっていく。

予鈴が鳴ったこともあり、あたしも歩き始める。


すぐ側で狙っている人──それは笹原さんなの?

違うよね。

例えばの話だと言っていたし……。

それとも遠回しの宣戦布告?

普段、物事を深く考えないあたしだけど……。

今回ばかりは考えてしまいそうだった。