ものすごく厄介なことになってきた。

「樹里!」

樹里に追いつくと手首を掴む。

「寺原さん、なんか変な誤解してない? 亮二とあたしはたまたまそこで会ってーー」

「うるさい!」

瑠衣の言葉を遮り、樹里は怒声に似た声を上げた。

「もう嫌! 笹原さん、亮二に近寄らないで! 同期だか何だか知らないけど、亮二はあたしの彼氏なの! 飲みに誘ったり、ホテル行ったり、相合傘したり。そんなんだから、『魔性の笹原』なんてあだ名がついちゃうのよ!」

樹里は言葉を続けた。

「亮二も亮二だよ! 浮気疑惑持たれて反省してなかったんだね! 最低だよ!」

樹里はボロボロと涙を流していた。
オレは胸が痛んだ。

「とりあえず場所を変えて話そう、な?」