「とりあえずまずはホテル出ようか?」

「そうだな」


オレがジーンズのポケットから財布を出そうとしていたら、「待って」と瑠衣が言った。


「ここはあたしが払うから」

「いいってば」

「そういえば、飲み代のお金立て替えてくれてたんだよね?」

「気にしなくていいから。オレのおごりってことで」

「だったら、ここはあたしでいいでしょう?」

「…分かった」


本当は女にお金を出させるというのは好きじゃない。

でも、瑠衣の性格上、こうしないと気がすまないのだろう。


自動精算機で支払いを済ませる。


「瑠衣、領収書出てきたけど?」

「いらないわよ~。ラブホテルの領収書なんて」

「それもそうだな」


そう言いながら、オレはレシートをジーンズのポケットの中にしまっていた。

ここに捨てていけばいいものの…。

後のことなんて何も考えずに。