オレは瑠衣の住んでいる所を詳しく知らない。

せめて寝るなら、行き先を告げてから寝て欲しかった。


「──お客さん、行き先はどうされます?」

「そうですね…」


どこにすればいいんだよ?

家に連れて帰るわけにはいかない。

百歩譲って樹里が泊めることを許しても、瑠衣が目を覚ました時、気分は良くないだろう。

だとしたら…行き先は──。


「すみません。とりあえず真っ直ぐ行ってもらっていいですか?」

運転手さんは車を走らせ始めた。

オレのこと“面倒な客”だと思っていることだろう。


そして、15分ほどして車を止めてもらった。

瑠衣を抱きかかえ向かった先は──

ラブホテルだった。


タクシーの運転手さんに露骨に「ラブホテルまでお願いします」と言うことが出来ず、建物の手前で降ろしてもらったのだ。