オレには“樹里の手料理が食べたい”──そんな風に聞こえた。

樹里と落合さんは昔つき合っていた。

その時に樹里の手料理を何度か食べたことあるだろうし…。

それとも深い意味はないんだろうか?

手料理を作ってくれる相手がいて羨ましい──そいう意味で言ったのか?



その後、落合さんと話すことはなかった。

マスターが作ってくれた、エビドリアを完食して帰ることにした。

最近の樹里のこと、マスターに相談したかったけど、お客さんが増えてきて忙しそうだし、また近いうちに聞いてもらおう。



「──帰るのか?」

オレが席から立つと落合さんが聞いてくる。

「そうですけど?」

「じゅりこによろしくなー」

「伝えておきませんから!」

そう吐き捨ててやった。