『お前…サオリじゃないな?』

ジンは自分の直感を信じて、目の前のサオリの身体を借りた“何者か”を睨み付けた。

サオリの身体を勝手に占領した“何者か”に少し憤りを感じていた結果の行動だったが、相手の眼を見た瞬間、ジンは何も言えなくなった…。

二人の間にしばしの沈黙が訪れた…

『フフッ…』

沈黙を破ったのは“何者か”の小さな笑い声だった。
『何が可笑しいんだよ!』
ジンにはその笑い声が自分を馬鹿にしたものだと感じ、少しムッとして言った。
すると“何者か”は再び小さく笑い、

『あなた、威勢はいいようだけど足、震えてるわよ。』

とジンの膝を指さした。

『うるせぇ!!てめえ何者だ!?サオリに何しやがったんだ!?』

『人に名前を聞く時はまず自分が名乗るものよ。』

その余裕のある態度はジンを更にイラつかせた。

『俺はジン・クレナイ!!次はお前が名乗る番だ!』
ジンはいつの間にか完全喧嘩口調になっていた。

『クスッ、怖がったり怒ったり忙しい人ね。まぁいいわ。私の名前はキサラ。』
意外にもキサラがあっさり名乗ったのでジンは拍子抜けした。