†*†ヴァンパイア学園†*†  巫女姫×王子


慶仁さんは、私が一人で知らない場所で暮らすことを不安に思い

当初、反対をしていた。



けれど、この学園はセキュリティーも厳重で

心配はいらないと何とか説得して、許してもらえた。



この学園のセキュリティーは本当に厳重で

中に入るには、身分を証明する為のICカードが必要となり

それにより、校内への入出を記録され管理している。



保護者であっても例外はなく

警備室に行きGUEST用のカードを発行して貰う必要がある。



ただし、学園の生徒には入学式の際にICチップが埋め込まれた

校章が入ったブレスレットが渡されるので

入り口でソレを機械に通せば、自由に行き来できる。



環境も人も変えて、どんな生活が待ってるのか。

不安もあるけれどドキドキの方が、何倍も上回っていた。

けれど、胸がドキドキする程に頭は冷静になっていく。




期待しすぎるな、と警鐘をならしている。



でもこれ以上、慶仁さんに甘えてばかりはいられない。

あの場所から出してくれただけでも、感謝しきれないのに。

迷惑は掛けたくない。



これからは、一人で生きて行けるようにならなくては―――――――





「では、行ってきます。」

「あぁ。気を付けてな。」



少し寂しそうな顔をした慶仁さんを残し、歩き出した。

私の知らない、新しい世界へと。








そう。何も知らなかった。




玄洲学園の本当の姿を。




私を待ち受ける、運命を。










私の運命の扉は、今解き放たれた――――――――――










☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨
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桜が咲き誇り、風に花弁が舞う朝

私は、入学式に出席するため寮を出て学園に向かう。



本当は慶仁さんも出席したいと言っていたのだが

春祭りなどの行事があり、とても忙しく行けそうもないと嘆いていた。



そういえば、毎年祭りの日に神楽殿で神楽を舞うのは私の役目だったな。

なんて少し懐かしく思う。



例え、お祭りや神楽を見に来てくれただけとは言え

私の周りに人が集まってくれることが、すごく嬉しかった。

普段ではあり得ないことだったから。



寮から学園へと続く桜並木を歩きながら、思い出に浸る。

そうこうしているうちに、だんだん周りに人が溢れ

学園が近づいたことを知らせる。





みんな友人たちや、保護者らしき人達と一緒に

キラキラ瞳を輝かせて話をしている。



でも少し違うところと言えば、

髪色がさまざまな事や、カラコンを入れているのか

いろいろな瞳の色の人がいること。



私は、それをみて少し胸を撫で下ろすことができた。

一人だけ違うとやはり目につくが

これなら異様に思われて変に目につく事はないだろうから。



この瞳の色でも大丈夫。

注目を浴びる事は無い―――――――



☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨
☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨*☨



入学式が厳かに進み、どこに行っても長たらしい

学園長先生の話が終わりを迎えた頃

周りの生徒が、なにやらザワザワし始めた。



私は、みんなの視線の先に居る一人の男子生徒に目を奪われた。

遠目からでもわかる。

彼の瞳はイエローグリーンとマリンブルーのオッドアイだったから。



そしてその男子生徒が、壇上に上がった瞬間「キャーーーーッ!!」という

鼓膜が破れるかと思うくらいの、黄色い声援が体育館を包む。



思わず「静かにしてっ」と叫びたくなったけど、グッと抑え

両手で耳を塞ぎ、壇上に立つ男子生徒に目を向ける。





『新入生のみなさん。ご入学おめでとうございます。

生徒会副会長の、桐生颯斗(きりゅう はやと)です。

みなさんには、守っていただきたい学園のルールがいくつかあり

それを厳守して頂きたく参りました。


1つ、生徒会室がある別棟へは、生徒会役員以外近づかないこと。

2つ、特Aクラスへは、普通クラスの方々は近づかないこと。

3つ、余程のことがない限り、下校時刻後の居残り・外出は控えること。


必要に迫られた場合は、必ず寮長に申請して許可を得てください。


ただし生徒会役員と『学園の薔薇』は、例外とします。

他校からの進学生がいらっしゃいますので説明しておきますが

『学園の薔薇』は生徒会会長のみ選任資格があります。


つまり、現生徒会長「黒崎冬夜」に選ばれた女(ひと)が

『学園の薔薇』と言う訳です。


以上、この3つを守って学園生活を楽しんでください。

尚、このルールが守れない生徒の方々には身の保証はないと思ってください。』




それだけいうと、王子様のようなキラキラスマイルを浮かべ

ココアブラウンのふわふわの髪を揺らし、マイクを切った。





その声、姿をみた女子生徒たちは、感嘆の声を漏らしたり失神したりと

反応は様々だが、今生徒会副会長が言った学園のルールには

一切反対意見を言うものはいなかった。



確か、特Aクラスは、渡り廊下を挟んで西棟。

普通クラスは、東棟にそれぞれ分かれている。



よくは分からないが、ソレさえ守っていれば平穏な学園生活とやらが

保障されるのならば反対する義理はない。



それに学園都市とも呼ばれる大きな学園、しかも全寮制となると

そういう特別な規則があるのだろう。



『学園の薔薇』というのは、要するにミスキャンパス

というヤツなのだろうし私には関係ない。

そう思っていた。




副会長の次の言葉が発せられる前までは―――――――――





『あ、言い忘れていました。月ノ瀬 瑞姫(つきのせ みずき)さん。

これが終わったら、生徒会室へ来てください。』



え?今、私の名前を呼ばれたような・・・

いやいや、きっと気のせいよね。

うん。生徒会室に呼ばれるなんて、ありえないもの。



『逃げようとしても、無駄だからね。必ず、来るように。』



――――っ。

見透かしたようなオッドアイの瞳がキラッと光り

一瞬目が合った・・・気がした。



なんとなく、嫌な予感しかしない。

どうしよう・・・。



出来るだけ目立たず、平穏に過ごしたかったんだけどな。