「まさか獣人たちが古の魔女を守っているということ?」

真剣な表情で詰め寄るドナにノーランドは半信半疑のまま口にしてしまったことを少し後悔した。

そして、先ほどまで持っていたふざけ心を封じて、再び真剣な表情に戻る。



「人ならざる者の定義が曖昧なので、魔女だったり獣人だったり精霊だったり、色んな解釈ができますけどね。けどもしその言い伝えをドルネイの皇帝が信じていたとしたなら、この国もまた古の魔女を探しているのかもしれませんね」

「まさか…あの禍の元凶のような魔女を探すなど…」

「災いの元凶だからこそですよ」

独り言のように呟いたライルにノーランドは口をはさむ。



「証拠があるわけではありませんが、ドルネイの現皇帝は相当な好戦家ですから、古の魔女を戦に利用しようとしていることも否めません」

ノーランドの仮説は飛躍しすぎるところがあるが、現実味を帯びているように聞こえるためライルとドナは黙って耳を傾けるのだ。



「それに今、ネイアノールにドルネイ軍の多くが派遣されているすきをついて密告者が増えていると聞きます。他国の侵略を許さないという皇帝が密告者たちを捨て置いてでもヴォルヴィア山に兵士を派遣し続ける理由が一体何か興味がありますね」

ドルネイ軍の派遣の裏には皇帝の思惑があることにはライルとドナも同じ考えだった。