「それにドルネイのほかホーリエ国を残して他の国は何の痕跡もありませんでしたから、古の魔女がいる可能性は高いですからね。引き続き調査します」
ドナの一言でノーランドが俄然やる気になったのは言うまでもない。
「それはそうと、最近ドルネイ軍が怪しい動きを見せているんです」
「それは俺も感じていた。ここに飲みに来る兵士たちが緩やかだが減ってきている。常連にそれとなく聞いてみると、どうやらネイアノールの国境付近に兵士たちが派遣されているらしい」
ノーランドもまた調査をしていたのか、ライルの情報を聞いても驚いた様子はなく、冷静に応じた。
「やはりそうでしたか。しかし何故でしょう。まだ我々が侵入した痕跡を探しているのでしょうか」
「いや、それは考えにくいな。俺たちがドルネイに入って暫く経つ。痕跡もなく長期にわたって兵士を派遣することは考えづらい」
ライルの見解に納得した一同はドルネイ軍の不可解な動きについて考えを巡らす。
そして、長い沈黙の後、難しい顔をしていたノーランドが口を開いた。
「ヴォルヴィア山でしたか…あの山には獣人が住み着いているらしいですね」
「それがどうかしたの?」
突然獣人を話に持ち出したノーランドにドナは怪訝そうな表情でそう返した。
「昔からの言い伝えにあるじゃないですか。“古の魔女は人ならざる者、それに付き従うのもまた人ならざる者たち”だと」
自分の仮説にあまり自信がないのか、言い伝えを引き合いに出すノーランド。
しかし、真面目故に信じやすいドナの食いつきは思いのほか良かった。