「ライル様のおっしゃるとおり、皇帝は身寄りのない魔女や魔女として優れた力を持つ者を多く宮殿に迎え入れているそうです。これに対して国民は皇帝を非難するばかりか魔女が宮殿にいるなら安心だというくらいですから国民の魔女に対する嫌悪は相当のものですね」
魔女に対する差別はどこの国も同じようなものだが、ドルネイは他国よりも酷いのは確かだ。
リーシャもまた皇帝に保護されたもののうちの一人なのだろうか。
宮殿に住まずあの家でたった一人と一匹で暮らしているところを見ればある程度自由はあるようだが、帝国お抱えの魔女ならば戦場に駆り出されているはずだ。
あの心優しいリーシャが戦場で人を傷つけることができるのか。甚だ考えにくい。
魔女による他国侵略への介入は恩義を感じて皇帝に尽くすためか、それとも皇帝の命か。
かなり意味合いは違うが、果たしてどちらだろうな。
「しかし一番可能性があった帝国軍の魔女たちの中から“古の魔女”に関する情報が得られなかったのは残念です」
ライルの考えを遮るように聞こえてきたノーランドの言葉にドナがあからさまに眉を顰めた。
「そう簡単に見つけることができていればこんな苦労はしていないでしょ。大体、古の魔女かどうかは情報だけで判断できるものではないわ」
ぴしゃりと言い放たれた言葉にノーランドは目を丸くして驚く。
「容姿なんて魔法でどうとでも変えられるんだから、怪しいと思った魔女には直接会って確かめなきゃ」
「ドナのいうことにも一理あるな」
「それもそうですね。情報だけで決めつけてしまうのは私の悪いところです」
ノーランドはそういってまたあの幸せそうな笑みを見せる。