彼女は人間世界から遠ざかった後、自身の死に直面した時、森に迷い込んだ少女に魔力を継承させた。

その後も古の魔女の力は時に人間との間に、時に継承により受け継がれてきた。

人々は魔力の継承を魔女の呪いとして恐れた。

アリエラが生まれて間もなくではなく幼少の頃に奴隷として売り飛ばされたのは、魔力の継承によって強制的に魔女になった可能性がある。



「アリエラが魔女としての頭角を現したのはいつだ」

「それが…皇帝がアリエラを宮殿に招いたときにはすでに魔女としての才能を開花させていたようです」

声を落としたノーランドにライルは予測が当たったことを悟る。

魔女は本来、魔力の使い方を多くの月日を経て覚えていく。

しかし、魔力の継承で魔女となった者は皆初めから高等な魔法の使い方を知っているため幼くとも絶大な力を発揮できるのだ。




「両親は自分の娘が突然魔女になったことを受け入れられなかったんでしょうね。…だとしても実の娘を奴隷に売り飛ばすなど人間が知れてますが」

ドナは軽蔑と侮辱の意味合いを込めてそう吐き捨てた。



「けれど皇帝が魔女を宮殿に迎え入れたというのはどういうわけでしょう」

「宮殿にというよりは帝国軍に迎え入れたかったんだろう。ドルネイは侵略によって国土を広げてきた国だからな。当然、侵略の裏には魔女の力による制圧があり、国民は魔女を忌み嫌うようになる」