しかし、ノーランドはそれが何の成果も上げられなかった自分たちを労うための言葉だと分かり、ただ黙ってその言葉を受けた。




「他に得られた情報はあるか?」

早々に普段の顔に戻ったライルにノーランドは嬉しそうに「はい」と返す。


「古の魔女のことを調べるにあたって、この国の魔女について一通り調査をしたところ、帝国が抱えている魔女は約三十人。我が国と同じくらいですね。この中でも最も強い力を持つ魔女がアリエラという皇帝つきの魔女なんだとか」

ライルは帝国が宮殿に抱える魔女の人数まで調べ上げてきたノーランドに舌を巻いた。



「最初はアリエラが古の魔女ではないかと思いましたが、素性を調べたところ、身元はすぐに判明しました。どうやらアリエラは幼少の頃両親に奴隷として売り飛ばされた身の上のようです」

アリエラのように奴隷として売り飛ばされる例は珍しくない。

魔女が自身の子孫を残すには女の赤子を産むことが大半だが、稀に自身の血を受け継がない魔女を誕生させることもある。それが“魔力の継承”だ。

魔力の継承とは魔女が持つ力を第三者に引き継がせることをいう。

継承には相手の意思など関係ない。つまり強制的に継承させることができる。

この魔力の継承をもってすれば魔女の人口は増えそうなものだが、魔力の継承による子孫維持が稀だといわれる所以は、その大半が魔女が死に直面したときにしか成立しえないことだからだ。

そして、この魔力の継承を一番初めに行ったのが古の魔女だ。