「今日はカルデアを作ります。ようは鶏肉のトマト煮ですね。こってりし過ぎず、トマトの酸味が適度にきいていてとてもおいしいんですよ」
それならリーシャにも覚えがあった。カルデアはドルネイの家庭料理のひとつで、ハーバー夫妻の店のメニューにもある。
味はピリリと辛いが、ピーナッツペーストが全体をマイルドに仕上げており、大人から子供まで幅広い世代に人気の家庭料理だ。
「私にも作れるかな?」
「作れるように練習するんですよ」
不安げなリーシャにメリアーデは笑いながらそう言った。
「そうだよね。うん、頑張る」
「大丈夫です。家庭料理というくらいですからそんなに敷居は高くありません。それに最初から完璧にできてしまっては教えることがなくなってしまって困ります」
メリアーデは茶目っ気たっぷりにウィンクし、料理の準備に取り掛かった。
料理のレッスンはまずメリアーデが手本を見せることから始まる。
以前、二人で料理をしながら習った際、指示されることをこなすことで頭がいっぱいになり、結局のところ手順やら調味料の量やらを頭に入れることができなかったためだ。
そのため、今はまずメリアーデが作って見せ、リーシャはメモを取りながら作り方を覚えるようになった。
もちろん材料をカットするなどの下準備はリーシャにもできるため一緒に行う。
下準備で一番難しいことといえば皮むきだ。これにはかなり苦労した。
否、今でもまだ時々手を切りそうになることがあり、皮むきに要する時間は未だ素人並だ。
むき終わった後のジャガイモを見てもメリアーデのものは綺麗だが、リーシャのものはでこぼこしており、皮と一緒に身も多く切っていることが分かる。